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  • 眼下突起は頭部の形状を決める一手
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  • 大顎の形を愉しむ。
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過ぎたるは及ばざるがごとし。

このコラムを、この中国故事から始めるのは
まさに中国産オオクワガタをテーマとするコラムに
ふさわしい。

さて、大顎が太いということである。

その昔、オオクワガタが太いといえば、
前胸のことであった。それが時代を追うごとに
頭の幅(複眼から複眼までの幅)にいき、近年では
完全に大顎の太さとなった。

一言に極太と言えば、大顎が太いことを指す。
そして、この極太は現在このクワガタを飼育している
多くの人々にとって魅力的である。

なぜ魅力的なのか?
それは、オオクワガタに限らずクワガタの象徴は頭部
にあり、さらに言えば大顎の形状にあるからだ。

大顎の基部(付け根)が頭部よりはみ出して見えるような
太い個体はそれだけでも何か異質なものさえ感じさせる。
なんといっても、自然のオオクワガタではそのような個体は
いないことから、その貴重性によって一気に人気がブレークし
血統として売られるようになった。

そうなると、どこの世界でもよくあるように、競争となる。
顎幅を測り、ゼロコンマ数ミリの差であっちのほうが太いとか
こっちのほうが太いとかエンドレスな競争となってしまった。
ところが厄介なことに、そのようなゼロコンマの微妙な
数値であるから、測り方によって誤差が出てくる。

たかだか0.2ミリほどの差が勝負の分かれ目とばかりに
とやかく言うひとも多くなってきた。
あのひとの測り方は甘い。あのひとのは厳しい。
そんなことが方々で言われ始め、議論の的となった。
そんな曖昧な測り方を統一しようと、クワ若葉というサイトが
示したのが、クワ若葉①と②による測り方である。
スペックの測り方

大顎を閉じた状態で、顎のラインに沿ってやや斜めに測る。
どうやら一般的には、大顎を開いた状態で垂直に測るらしい。
僕は長い間、大きな勘違いをしていて、多くのサイトで「斜め測り」
は悪いとされていて、垂直に測ることが正しいとされているのだが、
大顎を閉じた状態では、斜めに測るほうが数値が厳しく、垂直に
測ると数値が甘くなるので、これは一体どうしてだろうと思っていた。
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一般的に、大顎の太さを言うとき、大顎の基部のことを言う。
太さの基準について、友人であるYYさんと話し合った結果、現在
では以下のところが許容範囲内での基準であろう。

全長70ミリとした場合。

・5.3mm以下=細い

・5.3~5.6mm=普通~やや太め

・5.7~5.9mm=太め

・6.0~6.3mm=極太

・6.5mm以上=激太

きっと問題になってくるのは、5.7mm以上の基準であろう。
血統によっては6ミリなど当たり前とされているし、一方でそれを
測る人間の測り方によっても変わってくる。

クワ若葉で統一されたはずの測り方であるが、それでも
今もなお人によって測り方が違う。
一例を示すと、とある個体を二人の人間がそれぞれ違うノギスで
測ると、一方では5.6mmを示し、一方では6.0mmを示した。
ノギスの精度にもよるかもしれないが、0.4mmの差はもはや
誤差というより測り方の違いだろう。
これはごく最近起こったことだし、いまだにこういう問題というのは
あちらこちらで見受けられる。
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クワガタの象徴である、大顎が目立てば目立つほど
迫力があり、派手にうつる。ならば、大顎を太くしさえすれば
格好良い個体を得られるのではないだろうか。
と、思われがちだが、大顎そのものが太くても格好悪い例は大いにある。

無論、断っておくが僕は細い大顎のクワガタが良いとは思わない。
大顎の幅は無いよりあったほうが良い。僕だって、物凄く
太い大顎を持つ個体を手にしたとき、その印象に圧倒
されてしまう。

でも、太いという印象は、測って何mmというものではなく
様々な諸条件が重なって太いという印象になる。

例えばこれ。
北峰F4 3番up

大顎の形状はともかく、大顎の基部だけ注目してみると、頭部からはみ出し
気味で、「張り出し」が感じられ、そこそこ太いように見える。
だが、今度は頭部と前胸を比べてみよう。

頭の縦の長さ、いわゆる頭長が短く、頭幅も狭い。
さらに前胸に厚みがあり、こうして見ると頭の弱い個体となっている。

さて、同個体の全体を見てみよう。
北峰F4 3番
この写真では光源の違いによってまずまずのように写ってはいるものの、
前胸の厚み、腹部の大きさがあって、理想形である逆三角形のフォルムは崩れている。
この個体は大顎の基部だけを見ればまずまずではあるものの、頭部と前胸の関係、
さらに腹部を含む全長から見ると物足りなく見えてしまうのである。

頭部が大きく、前胸が下に行くほど狭くなる逆台形型で、腹部がスマートで短い。
というのは、頭部が強調された形状であり、これは逆三角形のフォルムである。
そのようなフォルムはオオクワガタでは理想のフォルムであるのだが、最近では
それを追求しようとするひとは少なくなってきた。

中国産オオクワガタは元々腹部の先がシャープな個体が多いというか、それが特徴
でもあるので、それだけをとって「腹部がしまっている」とする方もいるが、
実のところ、そんな個体はいくらでもいるわけで、問題は腹部の長さにある。
いくら腹部が細くても長ければ意味がない。腹部が短くなくては、完全な逆三角形は
成立しないのである。

大顎ばかりに注目していると、このようなところを見るのが疎かになり、結果、
太いんだけどなあ・・・と留保付きの個体となる。
さらに言えば、大顎の太さを追求することも一つの楽しみとは言えるものの、
この中国産オオクワガタ全体を考えれば、それはあくまで局所的な楽しみであり、
どこまでいってもそのクワガタそのものの究極形態とはならない。

つまりは、一点に集中が行き過ぎるとその他が疎かになることから、バランス良く
見ていくことが大事だと言うことなのだ。

大顎の太さはそれに見合う頭幅やボディバランスが無いと価値が低いのである。
このことは、こうして落ち着いて考えれば自明の理ではあるものの、永遠に気づかない
ひとも多い。だから、往々にして顎幅は6.3mm以上無いと貧弱に見えるなどといった
意見を見かけるのである。誠に門前の小僧甚だしきと感じ、失笑隠し得ない。

hopeiの愉しみは、そんな浮世の有様を尻目に、自分なりに気に入ったhopeiを
眺めながら、アレコレ次世代の形なんかを模索したりすることも大いにあるので
終わりのない顎幅競争や紛争なんかより心静かに楽しみたいものである。